男はニッと笑うと、否を唱えた。


「今は取りあえずな………。

ただし、それはほんの少しの間だけだ。

それに………、

あの式神が現れたことで、綺羅たちも動き出すだろう。

まずは、それを見定めてからだ」


「………親王様……。

松野(まつの)はどこまでもあなたと共に………」





 男は跪き、自分をジッと見つめてくる者へとそっと口付けを交わした。


 それは、まるで忠誠の証に対する対価のように。





 男からの口付けに、女は満足そうに微笑んだ。











 男は窓際に近づき、外を見つめると月影に微かに浮かぶ人物の名前を呼んだ。


「沙桐(さぎり)………。

今度こそ、君を手に入れるのはこの私だよ」





 暗い部屋の中に、怪しい呟きが木霊した。












          『永遠の約束―約束のはじまり―』 【完】