明かりを灯さず、月明かりだけが部屋を照らす。


 そんな暗闇の中、椅子に座りながら、男は窓の外へと視線をめぐらせていた。





 テーブルに置かれたグラスに口をつけると、唇の端をくっと上げた。


「やはり、麻生綺羅を守るために動いたか………」





 部屋の闇の中、一人の影が動き、そっと彼の前に跪く。


「次は、どのように? 

如月深青が生きているという事実は確認されましたが、依然、消息は不明です」





 男は苛立たしげに「ふん」と鼻を鳴らす。


「如月家の長きに渡る人脈は伊達ではないということだ。

これほどの情報を集めようとも、消息がわからないのだからな」


「はい………。

どうやら、一陣風霊界の中にも如月家を守るために動いているものがいるようです」





 男は椅子から立ち上がるとグラスを月へと翳す。


「あの組織に嗅ぎつかれると厄介だからな。

ここはやはり、麻生綺羅を見張るしかないな。

いずれ、時が来れば如月深青は自分から姿を現すことになる」


「では、それまで何もせずに待つと?」





 影に隠れた人物の声は不服さを表していた。