「実は、

あの報告書には書かれていないことで、

一つ気になることがあるんだ」


「報告書には書かれていないって、

どういうことだよ」





 まさか、あの報告書は偽造されていたのかという思いが綺羅の脳裏に駆け巡る。


 そんな綺羅に真之は静かに首を横に振った。


「あの報告書は、対外的なものに向けての報告書だ。

一般社会で受け入れられる内容の」


「お前のその言い方だと、

受け入れられないことがあの報告書には書かれていなかったということか?」


「ああ。

そして、このことは礼香も知らない」





 だから、この場に礼香の姿がないのかと綺羅は納得した。


「呼び出してってことは、

宮城には話さないほうがいいってことなんだな?」


「まあな。

あいつはのめり込むと一つのことしか見えない。

ああいう性格だから、

ある程度の情報を集めてから話そうと思っている」


「だけど、宮城にも話せない話を、

どうしてお前は俺に話してくれようとしてるんだ?」





 その理由。


 それは、聞かずとも綺羅にはなんとなくわかっていた。


「それは……、

そこにはお前が言っていたあの如月深青が関わっているかもしれないからだ」





 やはり、そうか……。