「麻生。ちょっと、いいか?」





 昼休みに綺羅は真之に声をかけられた。


 どうしても、二人だけで話がしたいということだったので、綺羅は慈に部室の鍵をもらい、二人は天文部の部室へと入った。


「話って、何だ?」





 二人だけでということは、真里たちにも知られたくない話。


 それに、この場にはあの宮城礼香の姿すらない。


 つまり、彼女にも聞かれたくない話ということだ。


 自分にだけの話。


 どんな話なのだろうと期待する反面、綺羅にはほんの少しの不安が心の中に渦巻いていた。


「ああ……」





 真之は壁に凭れ、腕を組むとじっと綺羅を見てきた。


 その瞳には怖いほどの鋭さが秘められていた。


「実はな。ちょっと、気になる話を聞いたんだ」


「気になる話?」


「ああ。この前、お前たちに見せた資料、覚えているか?」





 見せた資料………。


 綺羅の脳裏に浮かんだのは、この前見せてもらった、事件の詳細な報告書だった。


「あの報告書のことか?」


「ああ、それだ」


「それが、どうかしたのか?」





 真之は、心を落ち着かせるためか、一つ息を吐いてから顔を上げた。