綺羅は振り下ろした剣を、パッと手から離す。


 その瞬間、剣はまばゆい光を放ちながら消えてしまった。





 なんとか、成功したみたいだ。





 成功したことにホッとする綺羅。


 綺羅は膝をつくと、目の前で倒れている内藤の胸に自分の耳をつけた。





 トクン、トクン――――





 規則正しく聞こえてくる鼓動。


 そこで、ようやく綺羅は肩の力を抜いた。





 ハァ…と溜息を吐きながら、床に腰を下ろす綺羅。


 その途端、綺羅は自分の手が微かに震えていることに気づく。


「なっさけねぇ。

緊張の糸が切れた途端にこうかよ………」





 失敗するかもしれない不安と恐怖。


 それを隠しながらも、神経を集中させた綺羅。


 その心の中の不安は気を抜いた途端に、手の奮えという症状で現れた。





 綺羅は震える手に力を入れ、ギュッと握りしめると綺羅の傍でへたり込む詠美へと視線を向けた。


「………もう、大丈夫だよ…」





 目を開けたまま、放心状態だった詠美は綺羅のその言葉に「え…」と答える。


「内藤はもう大丈夫だ。

憑依させていた霊は、追い払ったから」


「あ………」





 震える手で口を押さえると、詠美は声を押し殺しながら涙を流した。


 微かに聞こえてくる嗚咽が、彼女が本当に内藤のことを心配していた証拠だった。