その瞬間、内藤の体を借りた霊は顔を歪めると、綺羅に攻撃を送る。


 両手を前に勢いよく振り下ろす。


 すると、振り下ろした場所から、強力なかまいたちが綺羅を襲った。





 幾重にもなる襲ってくるかまいたち。


 それを綺羅はすばやい動きで全て避けきる。


 そして、霊との間合いを一歩ずつ詰めて行く。


『………くっ!』





 悔しさに顔を歪めながらも、霊は攻撃の手を止めない。


 それは、止めてしまえば、自分はやられてしまうと本能で感じ取っているようだった。


『消えろ……、

消えろ………、

消えろ~~~!!!』





 『死ね』という言葉を使わない。


 それが、まさしく霊らしい。


 体を持たない霊にしてみれば、死という言葉の意味すらないに等しいのだから。











 幾度となく繰り出されるかまいたち。


 だが、綺羅はその攻撃に臆することもなく、少しずつ距離を詰め、ついには、霊との距離は二メートルもないという位置にまで来た。





「逃げ場はない。

もう、諦めろ」


『ひっ………』





 冷たく低い声。





 たかが人間。


 自分は霊の中でも高い能力を持つ者。


 だからこそ、自らの命をかけなければ、自分ほどの霊を呼び出すことなど人間にはできない。


 それなのに、たかが人間であるこんな奴がなぜこれほどの力を持っている?


 これは………





 そこで霊の思考は消えた。


 消える間際に見えたのは、光り輝く剣が自分に振り下ろされた場面だった。