「それじゃ………。綺羅。もうそろそろ行くわよ」


男の子の母親が男の子の背に手をかけ、車に乗るように促す。


男の子は力なくコクリと頷くと少女のほうを見ながらゆっくりと車へと歩みを進める。


車への1歩1歩の足取りはとても重く、その重さが男の子の行きたくないという気持ちを如実に表していた。





車に乗り込む前に男の子はもう1度、少女のほうを振り返る。


「ばいばい。またね。綺羅」


男の子の名残惜しさなど気にもかけずに少女は笑顔で手を振ってくる。


その行動に少し腹が立ちながらも男の子はコクリと頷いて車に乗り込んだ。


(きっと、また会える)


その時の男の子はそう信じて疑わなかった。