「内藤!」





 声を張って、名前を呼ぶものの、内藤からの返事はない。


 どうやら、すでに返事はできない状態にあるらしい。


「くそっ! 

考えている時間もなさそうだな」





 諸々の事情は後で内藤に聞く。


 とにかく今は彼を助けることを優先すべきだと綺羅は心に決めた。





 目を閉じたままの状態で、綺羅はより深く神経を研ぎ澄ませる。


 すると、不快な気に紛れるように一つのまっすぐな線が見えた。


 それが、まさしく、今の内藤を救い出すことのできる境の線。





 綺羅がこの力を知ったのは、ありとあらゆる術を教えてもらい、引越しする少し前だった。


 それまでは、自分の力が莫大な霊力だとしか思っていなかった。


 だから、誰にも知られなくないし、二度と使わないと思っていた。


 だけど、その力の本当の意味を道隆に教えてもらった時、うれしさもあったのだった。


 それは、この力で自分も深青を助けることができるかもしれないと思ったから。


 だから、この力を使う時は、深青の力になろう。


 誰かの役に立つ時に使おう。そう決めていた。


 なぜなら、これは闇に飲まれた人を救う力だから。