おじさん、今がその時なんですよね。





 綺羅は心の中で、道隆に囁いた。





 深青たちはおじさんが亡くなると同時に、姿を消した。


 それは自分たちの身に何かの危険が迫っていると思ったから。


 それなのに、深青は俺が危ない時に初を通して守ってくれた。


 それは、海堂たちが不信に思ったように、深青の存在がばれるということになりかねない。


 それなのに………。





 それは、道隆が言った、『そういう日』だと、深青が思ったから。


 だからこそ、綺羅も今の自分がそういう日なのだと判断した。





 内藤の行為は許されるべきではない。


 でも、だからといって、この時代に、死を持って償えというのは間違っている。


 内藤は生きて、その罪を償うべきであると綺羅は思う。


 だからこそ、今、たとえ自ら命を手放そうとしていても、それを救えるすべがあるのなら、綺羅はするべきだと思った。





 綺羅は深く息を吐くと、手に持っていた剣をまっすぐに自分の前で構えた。


 そして、目を閉じると神経を集中させる。





 あの頃は、集中することもできず、コントロールすることもできなかった。


 だから、力はいつも暴走していた。


 だけど!





 あれからは一度も使ったことのない力。


 だからこそ、これが成功するかどうかは綺羅にもわからない。


 ただ、この力を使いこなすことができれば、確実に内藤を助けることはできる。


 一か八かの賭けかもしれない。


 だけど、何もせずにただ黙っていることはできない。


 この力を持って、如月家の人たちと会った今。


 何とかなるかもしれないのに、知らないフリなんて、もうできなかった。