力強く頷く綺羅に詠美はゆっくりと立ち上がった。


 そして、綺羅の傍へと近づいて行った。


「お願い、明彦を助けて。

明彦は全部、私のためにこんなことを………。

自分の私情なんて何も入っていないの。

それなのに………」


「わかった。

だから、あいつは今から何をしようとしているのか教えてくれ」





 詠美はコクリと頷く。


「明彦は自分の体を媒体にして、霊を乗り移させようとしている。

それは、

自分が死ぬのも同然だって、

明彦は言っていた。

だから………」





 つまり、媒体を通して、霊を取り込む。


 それによって、増幅された力を手に入れるということか。


 だけど、それは自分の体を差し出すことであって、自分の魂は死んでしまうということになる。


 要するに、霊に乗っ取られるイコール喰われるということだ。


「チッ、やはり、そうか………」





 そうではないかという思いが綺羅にはあった。


 だけど、それによって、一筋の光は見えた。


「山口。よかったな。

なんとかなりそうだ」





 ニッと詠美に向かって笑みを浮かべると、綺羅は目を閉じ深く息を吸った。





 遠い記憶が綺羅の脳裏に甦った。