「相楽さんの言うとおりだよ。この暗示は全校生徒にかけられている」
「そ、そんなことっ………できるって言うの?」
「ああ、できるさ」
慈の疑問はあっさりと真之に肯定される。
そして、真之はある建物を指差した。
「あれを使えばな」
「校内放送?」
慈の呟きに、綺羅はハッと気づく。
そうか。
それなら、俺たちは何も知らずに暗示にかけられていたとしても説明がつく。
だけど………。
そこまで考えた後、綺羅には一つの疑問が浮かび上がる。
「だけど、学校には警察の捜査が入っていた。警察は言わば外部の人間だ。暗示にはかかっていないはず。それなのに、どうして旧校舎の存在は隠されたんだ? それも校内放送とか?」
「校内放送………というか、問題はスピーカーだな」
「スピーカー?」
「ああ。変だと思って、昨日のうちに調べてもらった。すると、ある一定の周波数が細工されていた」
「周波数?」
「ああ。俺たち人間の耳にはごく普通の音にしか聞こえない。だけど、その中にある周波数を加えることで知らずに俺たちは暗示にかけられていたんだ。だから、何かの音の中にというわけじゃない。スピーカーを通して聞こえてすべての音が暗示にかける要素があったんだ」