「それは、俺たちが暗示にかかってたからさ」


「暗示?」





 真里は顔を顰めた後、旧校舎を見上げる。


「正直に言うと、俺も実は旧校舎の存在には全く気づかなかったんだ。ただ、組織の調査部隊に調べてもらったところ、旧校舎の存在を教えられて。そこで初めて知った。旧校舎の存在をね」


「どういうことだよ、暗示って」





 すぐには信じられない言葉に、雅俊はパニくる。


 それは普通なら考えられないことだった。


 そんな雅俊とは対照的に、綺羅は苦々しく唇を噛み締めた。


「つまり、俺たちは旧校舎という存在を忘れさせる暗示をかけられ、今まで目の前にある怪しい建物をみすみす探すことも忘れていたということか………」


「でも、暗示にかけるってどうやって? 一人とか二人って問題じゃないわよ。ここにいる私たち全員が旧校舎の存在を今の今まで忘れていた。それって………」





 真之はフッと笑うと、旧校舎を見つめた。