俯き黙り込む慈を冷たく見下ろしながら、綺羅は雅俊に手を差し出した。
「ほらっ、雅俊」
「悪いな、綺羅」
腰を強く打った雅俊は綺羅の手を借りながら、塀をなんとか上りきり、金網へと手をかけた。
雅俊がそこまで上りきったのを見届けてから、綺羅は下にいる真里と慈へと視線を向ける。
「相楽。どうする? このまま、帰るか? 引き返すのなら今だぞ。俺は、そんな膨れた面をしたお前を連れて行く気なんてさらさらないからな」
つまり、自分たちと一緒に来るつもりなら、さっさと雅俊に謝れということ。
それができないのなら、もう帰れという意味だ。
何も言わず黙り込む慈。
「・・・・・慈」
そんな慈をなだめるように真里は慈の肩に手を置いた。
すると―――
「…ご…めんなさい………」
消え入りそうな声だが謝罪の言葉が聞こえてきた。
それはほんの微かな声。
少し離れた位置にいる綺羅と雅俊には聞こえたかどうかもあやしいほど。
「ほらっ! さっさとしろよ」
聞こえたのかどうかは答えずに綺羅は慈たちに手を差し伸べる。
それが今の言葉は綺羅に聞こえたという証だった。
「ほらっ、慈。早く行こう」
真里は慈の背中を押しながら塀の前へと歩いていく。
近くまで来た慈の手を綺羅はグイッと引き上げた。
その光景を見て、真里と雅俊はホッとした表情を浮かべた。
「ほらっ、真里。お前も」
続いて差し出された手に真里は喜んで飛びついた。


