「行方不明なの………。生きていることは確かだと思うんだけど、綺羅くんが引っ越してすぐに深青ちゃんのお父さんが亡くなったらしくて、それからどこかに引っ越したらしいんだけどそれがどこなのかわからないんだ」


『ミオ』という名は幾度となく聞いたこともある。


綺羅が何人もの告白を受けながらも一切受けなかったのは、誰か他に好きな人がいるからだと雅俊も気づいていた。


その相手が『ミオ』という名の女ということも。


だけど、雅俊が知っているのは『ミオ』という名前だけ、その女の子がどんな子でどんな容姿なのかも全然知らない。


それになんとなく彼女のことは触れてはいけない感じがした。


松方先輩のことはなんとなく聞けるのに、彼女のことは絶対に聞いてはいけない。


そんな風に雅俊は感じていた。


時々、隣に自分がいるのに、遠くを見る目をする綺羅はいつも彼女のことを追い求めていたのかもしれない。


だけど………






「でも、それならやっぱり応援してやらなきゃ。綺羅はやっと前に踏み出したんだからさ。真里ちゃんの気持ちもわかるけど、綺羅にずっとどこにいるのかもわからない人物を思っていろと言うのは酷じゃない?」


「うん………。そうだね。柏葉くんの言うとおりだね。私はただ綺羅くんは深青ちゃんとくっついて欲しいって自分の希望を押しつけてただけだもん。応援してあげなくちゃね」


「そうだよ」


綺羅はもう前を向いていかなくてはいけない。


雅俊はこれが一番いい方法だと自分でも思っていた。