「コーヒーでいいって」





 自分たちの声が聞こえていたのかすでに美恵子はコーヒーメーカーにセットしていた。


「そう。ちょっと時間かかるから、後でお母さんが持っていってあげるわ。これだけ先に持って行ってて」


「え? ………わかったよ」


「何よ、その間は。何かお母さんには聞かれたくない話でもするつもり?」





 人には聞かれたくない話をするからわざわざ家に連れてきたぐらいだし。


 だけど、そんなことを認めてしまっては、この母親は意地でも聞こうとするに決まっている。


 それがわかっているから、綺羅は適当な言葉を見つけて誤魔化した。


「別に。ただ、友達関係のことだからさ」


「深刻なの?」


「なんで?」


「え? だって、いつもはあんなに陽気な雅俊くんが人が変わったみたいに暗いんだもの。お母さん、一瞬具合でも悪いのかと思っちゃったわ」





 母がそう言うのもわかる気がする。


 何度か家に遊びに来ている雅俊は美恵子とも何度か顔を合わせたことがある。


 その時の雅俊はいつだって、うるさいぐらいに賑やかだった。


 だから、美恵子とも気があって綺羅をそっちのけで話し合っていたことがあるぐらいだ。


 それが、あの暗さ。


 美恵子がそう言うのも納得できるというものだ。