「そう言うと思った。だけど、母さんがうるさくってさ」


「美恵子さん?」


「ああ。人には好みがあるとかどうとか………」





 いやいや話す綺羅を見ながら、雅俊はブッと噴出す。


 何がおもしろかったのかはわからなかったけど、笑っている雅俊を見て、綺羅はホッとした。


「美恵子さんって、本当にお前の母親?」


「え? まあ」





 なんとなく雅俊が言いたいことはわかっていた。


 おそらく、雅俊が言いたいのは自分の性格からは美恵子のような母親がいることが信じられないということだろう。


 それは綺羅自身が一番よくわかっていた。


 どう考えても、母親似とは思えなかったけど、それでもこの人の血が半分は入っているのだと思うと、自分の性格と母親の性格のギャップに疑いを持たずにはいられない。


 もしかしたら、反面教師としてこんな性格になったのかもしれないが綺羅には美恵子という母の存在は実の母親でありながらも、未知の生物に見えて仕方がなかった。






「じゃあ、コーヒーでいいか? もちろん、アイスで」


「ああ。悪いな」





 それだけ聞くと、綺羅はもう一度部屋を出て母親が待つキッチンへと戻っていった。