「海堂、お前の言うことは正しいよ。確かに今は個人的な感情に流されている場合じゃない」





 綺羅のこの言葉に、表情を変えずに真之は綺羅をまっすぐに見つめる。


 まるで、言葉の真意を見抜こうとするように。


「だけどな……、幼なじみである人間を疑われてそれを庇う雅俊の気持ちは当然のことなんだよ。だから、もっと証明を示せ」


「証明?」


「ああ。お前たちが言う光浦吉備を疑う証明を。そもそもこの事件を起こすにあたって、一番大切なことがある。俺たちの見解では、この事件には必ず人以外のものが関わっていると確信している。お前たちはどうなんだ?」





 真之は一瞬、礼香のほうを見てからコクリと頷いた。


「俺たちもお前たちと同じだよ。この事件には霊が絡んでいると思っている」


「それなら、光浦にはそういう力がある。その確認は取れているのか?」





 状況や動機などをかんがみれば、雅俊には残念だが、光浦吉備があやしいとは思う。


 だけど、それでも綺羅にはこの力があるかという点が引っかかってならなかった。


 幼なじみである雅俊だ。


 長い間、吉備とは一緒にいたはず。


 その時は気づかなくても、綺羅たちの力を知ったのであれば、もし、吉備にそれらしい兆候が過去にでもあれば、雅俊は気づいたはず。


 そのことを気づかないということが綺羅には吉備が大元の犯人ではない気がしてならなかった。