情報が全く入ってこないのは綺羅も同じだが、あの慈が癇癪を起こすわけではなく落ち込んでいるというのが、なんとなく可笑しく感じてしまう。
それもよく考えれば、おそらく翔が絡んでいるからだろうとは予想はつくのだが、綺羅の知っている慈からは落ち込むなんて姿が想像できなかった。
「あいつは、龍野先輩が絡むと人が変わるな………」
「あ~! そんなこと言わないの! 慈だって、女の子なんだよ~…。好きな人のことだもん。一喜一憂しちゃうんだよ」
「でも、あの相楽だぞ。………落ち込む姿なんて想像できないな~…」
何度想像しても、綺羅の脳裏に慈の落ち込む姿は浮かんでこなかった。
それどころか、綺羅の脳裏に浮かぶのはこのことを知らせてもらえない事実に癇癪を起こす姿だった。
「酷いよ、綺羅くん。綺羅くんは慈のことなんだと思ってるのよ」
「なんだとって………、一応、女?」
制服がスカートをはいているのだから、一応女だろうが、綺羅には慈がスカートをはいていること自体に疑問を感じることがある。
それぐらい、普段の慈からは女だと意識ができない。
「一応って………。慈が聞いたら、悲しむよ~…」
「悲しむ!?」
それこそ、想像できない。
反射的に答えてしまった綺羅の言葉に、温厚な真里もぴくりと反応する。


