その言葉にもあゆみは反応せずに、男が体を這う手を黙って受け入れる。


 その姿に満足なのか男はうれしそうに笑い出す。


「みんなどう思うだろうね。あの和田さんが僕にこんな風にされているなんて……クク………」





 何を言われようとも、それを痛みと感じる術もあゆみは失くしてしまった。


「君が悪いんだよ………」





 そう………。


 悪いのはあたし………。


 何度となく、聞かされる言葉にあゆみは心の中でさえ逆らうことを失う。


 素直に言われた言葉をそのまま受け入れる。


 そうすることが、この状況では一番楽なことだから。


 そして、彼をここまで追い込んでしまったのは紛れもない自分だということをあゆみ自身がわかっていた。


「そう、君は僕に逆らおうなんて思わないほうがいい。僕は今までの僕じゃない。こんな風に君よりも有利な立場にいるんだからね」





 男が発した言葉と同時に彼の後ろに見える黒い大きな物体。


 その物体の姿を確認し、あゆみは、もう自分がここから出られることはないのだと確信した。