暗い建物の中、あゆみは周りを見渡しながらギュッと自分の膝を包み込む。






 なぜ、こんなことに………





 そう思いながらも、あゆみはこの場所から動くことができなかった。


 気がついた時にはすでにここにいた。


 初めこそ、どこか確認しようかと思ってみたものの、今ではその気持ちも消えうせた。





 自分は強い人間だと思っていた。


 クラスの女子のグループでは一番力を持っているグループに入っているし、その中でもリーダー的な存在だった自分が、まさかこんな事態に陥るとは思いもよらなかった。





 こんな恐怖に震える姿を誰にも見せることなんてできない。


 自分は強くなければいけないんだ。





 心ではそう思いながらも、あゆみは体の震えを抑えることができなかった。





 あゆみは諦めにも似た気持ちで包みこんだ膝に自分の頭を埋めた。





 すると、キ~~…という重苦しく耳につく音が聞こえてきた。





 誰か、来た!





 その瞬間、喜びよりも恐怖心が彼女を襲う。


 微かに震えていた彼女の体は恐怖のためか歯までカチカチと震わせる。





 近づいてくる足音。


 足音が大きくなるにつれて、あゆみの震えも激しくなってくる。





 こ、怖い………。


 誰か、誰でもいいから、助けて………