『もっと、大人しい子かと思ったんだけどな~…。あそこまでお前にべったりな姿を見ていると幻滅だよ』


「恐ろしくなってきたか?」





 からかい気味に言うと、柏葉は言葉に詰まりながらも「まあな」と小さく答えた。


 それは聞こえるか聞こえないほどの声だったのだが、綺羅の耳にははっきりと聞こえた。





 つい笑いそうになる声を綺羅は呑み込む。


「今から教室に戻るよ」





 きっと、戻ると礼香の質問攻めにあうのだろうが、このまま、ずっとここにいるわけにもいかない。


 今日が嫌だからと避けていようとも、明日には同じように聞かれるのだ。


 遅いか早いかの違いなだけだ。


 嫌なことは早いうちに片付けておこう。





 綺羅は決めるとすぐに立ち上がった。