ハッと綺羅は目を開け、勢いよく体を起こした。


「夢……か………」





 額に手を当てるとじんわりと汗を掻いている。


 それと同時にぽたりと自分から落ちた雫に綺羅はハッと目に手を置いた。





 どうして………?


 夢だったはず。


 なのに、綺羅の瞳からはとめどなく涙が溢れてくる。


 なぜ、どうして。


 疑問はどんどんと湧くのに、それと同じぐらい胸を締め付けられる。





 涙を拭かずにギュッと自分の胸を掴む綺羅。


 その時、携帯がポケットの中で震えだした。





 綺羅は無造作にポケットから携帯を取り出すと、開いて耳に近づける。


『綺羅? お前、いつまでさぼる気だよ』


「雅俊………」





 携帯から聞きなれた親友の声に綺羅はホッとする。


 そして、やっと自分の流れている涙に手を当て、拭き取った。


『…ったく、お前がトイレに行ったまま戻ってこないって、宮城さんから質問攻めにあって大変なんだぞ』





 その光景が容易に想像できてしまい、綺羅はつい笑ってしまう。


『何がおかしいんだよ。お前のことだぞ。とばっちり受けてこっちはいい迷惑してんだよ』


「でもお前、宮城のこと可愛いって騒いでたじゃないか」


『う……、それは………』





 痛いところを突かれたようで柏葉は押し黙る。