「あれ? 綺羅くん、どこか行くの?」





 目ざとく気づいた礼香がつかさず声をかけてくる。


 席に座っていたはずなのに、慌てて立ち上がった姿を見て、もしかしてついてくる気なのかと一瞬疑う。


「ちょっとな」


「じゃあ、あたしも………」





 当たり前のようについてこようとする礼香に綺羅はキュッと眉を寄せた。





「いや。それはダメだ」


「え? どうして?」


「トイレだし。お前、男子トイレまでついてくる気か?」





 途端に礼香は頬を赤らめ、「ああ、トイレね…」と呟く。


 さすがに男子トイレにまでついてくる気はないらしく、礼香が席に着くのを確かめてから綺羅は教室を出て行った。





 綺羅は教室を出ると、まっすぐに廊下を突き進み、男子トイレの前も素通りする。


 そして、階段を上がって行き、屋上へと続くドアの鍵をポケットから取り出した鍵で開けた。





 屋上に出た綺羅はいつもの定位置の場所まで歩いていくと、座り込み、ゆっくりと寝転んだ。