「綺羅くん、おはよう!」





 肩肘をつきながら、窓の外を見ていた綺羅は後ろから聞こえてくる声に顔を上げる。


「ああ、おはよう」





 特に何かを気にすることもなく綺羅はまた、窓の外へと視線を向ける。











「ねえねえ、宮城さん。いつから、麻生くんのこと名前で呼ぶぐらい親しくなったのよ」


「え? えっと………、少し………秘密かな?」


「あたしたちがお膳立てする必要なんて全然なかったじゃない」


「すごいな~……」





 口々に話す転校してきてからの友達に礼香は恥ずかしそうにしながらも満足そうな笑みを浮かべていた。


「そんなことないよ~…。ちょっとしたきっかけがあっただけ」


「え~~~? だから、それが何なのかを教えてって言ってるのに~…」


「だ~め。秘密だって、言ってたでしょ?」





 前の席には噂の本人である綺羅が座っているというのに、全く気にせずに礼香とその友達は話を続ける。


 もしかしたら、気にしていないとかではなく、綺羅にこのことを聞かせるのが目的かもしれない。





 綺羅は嫌でも聞こえてくるあからさまな話し声に一つ溜息を吐いてから、席を立った。