「ギャアアアアアアアアア!」












 耳の鼓膜を突き破りそうなほどの咆哮を上げ、物体は黒い靄を吐き散らしながら萎んでいく。





 倒したのか?






 綺羅がそう思った刹那―――――


『助けて………。助けて、お兄ちゃん………』





 洋館でも聞いたあの声が綺羅の耳に届いた。


 綺羅は物体を凝視する。


 すると、一瞬だが綺羅の視界に少女の姿が映り、すぐに消えた………。





 その後も、綺羅は物体が消え去ってしまってからもずっと、目を離すことができなかった。











「麻生くん。大丈夫?」





 じっと、物体が消え去った場所を見ていた綺羅は声をかけられ、初めてこの事態のとんでもなさを自覚する。





 目の前で心配そうに自分の顔を覗き込んでくる礼香を見ながら、その後ろにいる真之へと綺羅は視線を向けた。


「お前ら……、一体………」





 綺羅のその言葉に礼香はチラリと綺羅の後ろを見る。


 その行動で、綺羅はハッと気づき、翔のことを見た。





 翔はにっこりと笑うと、深く頷いた。