物体は幾度となく攻撃を仕掛けてき、綺羅はかわすことで精一杯だった。
攻撃もほとんど効かないとなれば、もうどうすることもできない。
「くそっ! どうすりゃ………」
「後は任せて、麻生くん!」
聞き覚えのある声に綺羅は振り返る。
だけど、綺羅が振り返る前に二つの影が綺羅の視線を横切り敵へと一直線に突き進んでいった。
振り返りかけていた綺羅はすぐに敵へと視線を戻した。
「真之!」
鋭い声に導かれるように数々の札が悪霊を取り囲み、空中を舞う。
綺羅はその光景をじっと見ながら、驚きで目を見開いていた。
宮城に………海堂?
真之は目を閉じ、右手の人差し指と中指を立て意識を集中させている。
そして、礼香は札の力によってか、押さえつけれている悪霊へと一気に突き進む。
その手には短い短剣が握られていた。
目の前で行われている光景。
その光景が綺羅には信じがたく、それでいて驚きの連続だった。
礼香が近づいてきたことに危険を感じたのか、物体は自分の動きを制限している札を振り払おうともがき始める。
だけど、すでに札は身動きが取れないほどに密集していた。
礼香の勢いは止まるところを知らず、まっすぐに物体へと向けられる。
そして、目の前まで来た、その時―――――。
軽やかな跳躍で礼香はその短剣を物体の頭上に突き刺した。