「雅俊………」


「朝から、怖い顔してんな~。どうした、どうした~?」





 相変わらず、空気の読めない奴だ。





 綺羅は周囲の意味のわからない態度にイライラしていたものの、柏木の登場でそのイライラもどこかへと消えてしまったことに気づいていなかった。


「お前は、相変わらず朝からテンションが高いな」


「いや~…、それだけが俺の取り柄と言いますか~…」


「別に褒めてないから」





 照れた表情を見せる柏木に綺羅はすぐさま突っ込んだ。


「なんだよ、褒めてないのかよ~…。チェッ!」





 どこをどう捉えたら今の言葉が褒め言葉に聞こえるんだよ。





 おめでたい思考の柏葉を見ながら、そんな風に楽観的な彼をうらやましくも思っていた。


 きっと、雅俊なら今のこの状況も全く気にしないんだろうな~と。





 相変わらずの視線に晒されながら、綺羅は柏葉と教室へと向かう。


 何気ない会話をしていた二人だが、突然、柏葉は思い出したかのように綺羅に話し出した。


「あ、そうそう。校門の近くでお前のこと話してた奴がいたからさ、何か聞いたんだけど」


「俺の話?」





 聞き返しながらも、綺羅は先ほど自分に向けられた奇異な視線を思い出していた。


「ああ。まあ、お前の話なんて年がら年中、女子の口からは出てるんだけどさ、さっき、聞いた話はちょっと違うみたいだったから」


「どんな話?」