振り返った先に見えるものは、別に何も変わりはなく、ただ薄暗い気味の悪い見慣れた学校内の風景。


 ただ、それだけのはずなのに、あゆみは自分の背筋に何かツ~…と冷たいものが落ちてくるような寒気を感じた。


「は、早く帰ろう!」





 誰もいないのに、一人大きな声を出し、自分を励ましながらあゆみは小走りで廊下を駆け抜けて行った。





 やっと、昇降口にたどり着き、自分の靴を履きながら閉じられているドアを開けようとすると、力を入れるとカチャカチャという音。


「え~? 嘘でしょ~? いくら、遅いからって鍵………。ハァ~………」





 あゆみは、何度揺さぶっても動こうともしないドアにもたれ、怖さのあまり緊張していた分の溜息を吐いた。





 ここが閉まっているということは、遅くまで開けてある職員玄関から出るしかない。


 またも、あの暗い中を歩いていかないといけないのかと思うと疲れがどっと出てくるが、ここでずっとこうしているわけにもいかず、あゆみはゆっくりと立ち上がり、また来た道を戻りだした。


「もう、不気味なんだよ!」





 悪態を吐きながら、怒りに任せて廊下を爆走するあゆみ。


 靴と鞄を持ちながら、靴下で走りこむあゆみはあまりの必死さと自分の悪態の声の大きさのあまり、自分の後ろから何かが聞こえてきている音に気づいていなかった。





 はあはあと息を上げながら、走っていったあゆみは突然、何かに躓いて派手に転んでしまう。


「きゃあああ!」