「も~う、どうしてこうも夜の学校って気味が悪いのよ~…」





 泣きべそをかきながら、和田あゆみは鞄を両手に抱え、暗い廊下を駆け足で駆け抜けていく。





 ついてない―――





 駆け足で廊下を走りながら、あゆみは今日一日のことを思い出す。





 今日は友達と一緒に失恋慰め会とばかりにカラオケに行く予定だったのに、なぜか担任に捕まったのだ。


 それは日頃の授業態度の悪さが問題なのだが、それでも今日一日の運の悪い数々の出来事を思い出すと、それも今日のついていない自分の運が影響しているようにしか感じなかった。





 もちろん、カラオケの予定はキャンセルせざるをえなかった。





 せっかく、カラオケしてこの失恋の痛みを消し去りたかったのに、倉知(くらち)の奴~~~!





 あゆみは心の中でにっくき自分に仕事を押し付けてきた担任を恨む。


 それと同時に、怒りを含みながらもまだ心が疼く人物の顔があゆみの脳裏をよぎった。


「もう、本当、最悪」





 急いでいたはずなのに、あゆみは立ち止まりその場に蹲る。





 彼が誰の告白も受けないことは知っていた。


 少し前に生徒会副会長の松方先輩と付き合ってすごいショックを受けたけど、すぐに別れたから、やっぱり彼は誰とも付き合わないんだと思っていた。


 だけど、いきなり、あの転校生がやたらと麻生くんの傍をうろつくから。






 あゆみは一ヶ月前に引っ越してきたばかりの宮城礼香を思い出す。