「綺羅くんはその鈍感さを治すことかな」





 真里に人差し指を突きつけられた綺羅は顔を顰めながら、「鈍感?」と繰り返す。


「綺羅くんって、一つのことに対しては異常なほど敏感なのに、それ以外のことにはあまり興味がなさそうだから」





 真里の『一つのこと』が何を指しているのか綺羅はよくわかっていた。


「だからね、少しはその鈍感なところを直していくと、見えるものも増えるかもしれないよ」





 綺羅はフッと笑う。


「それは当たってるかも………。少しは他のことにも興味を示さないとな」


「うん!」





 真里にそうは言ったものの、綺羅は自分が他のものに興味を示すようになるなんて無理だと思っていた。


 自分の中での深青の存在は真里が思っているよりも大きい。


 それを他のものにも興味を持つだなんて、いつだって何もかもを深青と結び付けていた綺羅には不可能に近いことだった。


「あと。お前もよく考えとけよ。これからの自分の力の使い方」


「あ…。そ、そうだね。そのこともきちんと考えておくよ」





 一番初めに出た「あ…」という言葉で真里が綺麗に忘れていたのだろうとは気づきながらも、綺羅は気づかないフリをした。