「でも、麻生くんにそう言ってもらえてよかった~。実は麻生くんが怒ってるんじゃないかと気になってて」





 胸の前で手を合わせてホッと息を吐く礼香。


「どうして、俺が?」


「だって…、麻生くんって相良さんと仲がいいみたいだったから、余計なことをして相良さんを傷つけることになってしまった原因を作ったあたしのことを怒ってるんじゃないかって」





 伺うように上目目線で綺羅を見つめる礼香。


 男子のほとんどがその礼香の表情を見たら、惚れてしまうだろう表情を前にしても綺羅は冷静に答えた。


「そんなわけないだろ。どうして、俺が………。それに、俺は相良と特別仲がいいわけじゃないし。真里の友達だから一緒にいることが多いだけだよ」


「え? そ、そうなの? じゃあ、もしかして麻生くんの彼女って河原さん?」





 首を傾げて、今度は綺羅ではなくその隣にいる真里に問いかける。


 真里はいきなり、ハッとした表情をしながら、慌てて否定する。


「ち、違うよ! 違う! 私は綺羅くんのただの幼なじみ。ただ、それだけだもん!」





 必死に否定する真里を見ながら、明らかにホッとした表情を見せる礼香。


 その表情を見て、綺羅は気づかなかったようだが、真里ははっきりと礼香の想いに気づいた。


「そうなんだ~…。幼なじみなんだ~、二人は」


「そうだよ。そう!」





 やたらと力を入れて肯定する真里を綺羅は不思議な気持ちで見つめていた。