綺羅は隣を歩く理佐子に視線を向けた後、自分の腕に絡める彼女の手を見つめる。


中学の頃から、一つ上の学年である理佐子が自分に好意を寄せていることは知っていた。


初めて彼女から告白を受けたのは中学1年の時。


その時の綺羅は、正直理佐子の名前さえも知らない状態で、即答で彼女の告白を断った。


その後で、彼女が中堅議員である松方収蔵(まつかたしゅうぞう)の一人娘であり、この学校では有名な美少女だということを知った。


だからと言って、自分が理佐子のことに対して好意を持つこともなかったし、もうそれで終わりだと思っていた。


だけど、学年が一つ上がってすぐに、彼女が生徒会の副会長となって、会計に綺羅のことを指名してきたのだ。


もちろん、彼女だけの独断ではないだろう。


決定権は生徒会長にあるのだから………。


だけど、そこに少なからず彼女の意思が反映していたのだろうと綺羅は思っていた。







 それから、生徒会のメンバーとして綺羅と理佐子は関係を築きはじめ、一度告白を断ったのだが、綺羅は理佐子が自分にまだ好意を寄せているのだろうと薄々気づいていた。


そして、昨日、4年ぶりに2度目の告白を理佐子から受けた。


はっきり言って、理佐子のことを好きかと問われると即答はできない。


だけど、こんなに思ってくれていて悪い気もしなかった。


だから、これから好きになることはあるという思いが綺羅が理佐子の告白を受ける後押しをした。


(それに………、もう、自分のこの気持ちを忘れなくてはいけない………)


綺羅は理佐子が絡めている腕とは反対側のポケットに手を入れ、ペンダントを握りしめた。