ディックの片手がわたしの頭を、ゆっくりと撫でていく

十年以上経った今も、

嫌というほどに鮮やかに残る記憶。



ウォルナットの、小さくて大きな手。




「わかってる。アリスがぼくもミシェルも好きなのは、よーく、わかってる。」

「……ごめん…ね…。」




ディックは、わたしやウォルナットの友達だった。



村の中でも頭の良い、

おとなしくて、気の優しい人


そして、



「大丈夫さ。ぼくは昔からそんなアリスが好きだからね…。」

「…うん…。」



胸の痛みさえ

和らげてくれる声

いつも甘えてばかりだ。



そう、


昔からこの人は、わたしを想っていてくれていた。