あ、そうだ と、娘はなんのお話かを思い出したようで わたしの方を見て目を輝かせた。 「あのね、“ふしぎのくに”のお話ってわかる?」 娘の他愛のない笑顔に わたしが返したのは、大人だけが使う 上っ面だけの微笑だった。 「…知らないわ。知らないけれど…お友達からその“お話”をもう聞いちゃダメよ。」 わたしは言い聞かせるように、 いや、娘に言い聞かせるためにそう囁いた。 もう、 大事なものを失うのは嫌だから。 わたしは、こんな日が来るのが怖かった 娘の口から、その話を聞く時が。