例えば、
部屋着の靴下が左右で違っていても、そのままコンビニぐらいは平気で出かけたり、

服は洗濯して、たたんだそばから手当たり次第着ていったり、

休日は顔すら洗わない女だ。


化粧をしている顔を見たのは、見合いの時だけ。

我が姉たちは、ネイルアートという爪の装飾を好んでいたが、未礼の爪は、まっさらだ。



身を飾ることに執着はないようで、ネックレス以外のアクセサリーをしているところも見たことがない。



つまり、未礼にとって、そのネックレスは、装飾品という意味合いを持たない。




私は、見たのだ。


以前一度、未礼の携帯電話に出た時、
壁紙が、今は亡き両親と幼い未礼の仲睦まじい写真を写したものだったのを…。


ネックレスは母の形見。




「未礼は、昨日の今日で、また人の世話になることが忍びなかっただけで、
ネックレスを失ってもよいということではないのだ…」



「だから、啓さまは、1人自主的に探しにこられた、というわけですか」

うなずく私に、琴湖は呆れ顔だ。


「…仕方ないですね。私たちも手伝います」


「いや。私1人で探す。」


「どうしてですか?3人で探した方が効率いいですわ」


「私1人で十分だ」


「1人で、この広さをあてもなく探すなんて無鉄砲すぎます!」


「2人は、学校に戻るんだ」


「そんな…、他人行儀な…」


背をむけた私に、琴湖とジャンは、なおも食い下がった。


「手分けしてでも早く探さないと、見つかるものも見つからなくなってしまいますわ!」


「そうだヨ!琴湖の言う通りだ!」


「言い争うつもりはない。無意味だ」


「なぜボクたちを遠ざけるんだい?」



「未礼がネックレスを落とすことになった責任は私にあるのだ。

その責任を負う義務がある。

未礼に、ネックレスを返してやらねばならない。

誰の手も借りず、私1人で成し遂げなければ、責任を果たしたことにはならないであろう」



必ずや、この手で、未礼のネックレスを見つけ出すのだ。