「でも探せるところは全部あたった。
君はもう十分探した。
あとは大人に任せたほうがいい」
九地梨の、私を気づかう口ぶりのなかに、突き放すような冷たさを感じた。
「…そうはいかない」
「未礼がいなくなったことに、君が責任を感じることはないよ」
「だが…っ…」
私の反論に耳を貸すことなく、九地梨は軽く右手をあげてタクシーをとめた。
「もう私に出来ることは何もないということか…」
九地梨は、いたわるような笑みを浮かべて、私をタクシーに乗せると歩道に戻った。
無力さと疲労で気が抜け、私は沈みこむようにタクシーの背もたれに身体をあずけた。
ミラー越しに、手を振る九地梨の姿が見えた。
私を乗せたタクシーが角を曲がるのを見送ると、九地梨は身を翻し足早にどこかへ向かった。
自分はまだ未礼を探すつもりらしい。
そう、彼らにはまだ心当たりがあるのだ。
さっき、桧周との電話で聞こえたのだ。
小声で会話していたため、はっきりと聞きとれなかったが、
「そこしかないか…」
「これから向かう」
「啓志郎くんを帰してから」
角を曲がったところでひそかにタクシーをおりていた私は、九地梨のあとを追った。
未礼にたどり着くまで家には帰れない。
早足で交差点を抜け、大勢の大人でにぎわう繁華街に入って行く九地梨を駆け足で追った。
このような場所に訪れることははじめてだ。
場違いな気もしたが、人混みの中、九地梨を見失わないことに必死で周りの目など意識している場合ではなかった。
さすがに息が上がる。
一体どこにむかっているというのか。
何故私に何も言わなかったのか。
九地梨が、路地に入って行く。
私も人混みをかきわけあとに続いたが、すでに九地梨の姿はどこにもなかった。
明るい繁華街を一歩路地に入れば、急に雰囲気が変わり、思わず足を踏み入れることに躊躇してしまうほどだった。
暗く、さびれた陰気臭い空気がただよっている。
見失ったか…。
君はもう十分探した。
あとは大人に任せたほうがいい」
九地梨の、私を気づかう口ぶりのなかに、突き放すような冷たさを感じた。
「…そうはいかない」
「未礼がいなくなったことに、君が責任を感じることはないよ」
「だが…っ…」
私の反論に耳を貸すことなく、九地梨は軽く右手をあげてタクシーをとめた。
「もう私に出来ることは何もないということか…」
九地梨は、いたわるような笑みを浮かべて、私をタクシーに乗せると歩道に戻った。
無力さと疲労で気が抜け、私は沈みこむようにタクシーの背もたれに身体をあずけた。
ミラー越しに、手を振る九地梨の姿が見えた。
私を乗せたタクシーが角を曲がるのを見送ると、九地梨は身を翻し足早にどこかへ向かった。
自分はまだ未礼を探すつもりらしい。
そう、彼らにはまだ心当たりがあるのだ。
さっき、桧周との電話で聞こえたのだ。
小声で会話していたため、はっきりと聞きとれなかったが、
「そこしかないか…」
「これから向かう」
「啓志郎くんを帰してから」
角を曲がったところでひそかにタクシーをおりていた私は、九地梨のあとを追った。
未礼にたどり着くまで家には帰れない。
早足で交差点を抜け、大勢の大人でにぎわう繁華街に入って行く九地梨を駆け足で追った。
このような場所に訪れることははじめてだ。
場違いな気もしたが、人混みの中、九地梨を見失わないことに必死で周りの目など意識している場合ではなかった。
さすがに息が上がる。
一体どこにむかっているというのか。
何故私に何も言わなかったのか。
九地梨が、路地に入って行く。
私も人混みをかきわけあとに続いたが、すでに九地梨の姿はどこにもなかった。
明るい繁華街を一歩路地に入れば、急に雰囲気が変わり、思わず足を踏み入れることに躊躇してしまうほどだった。
暗く、さびれた陰気臭い空気がただよっている。
見失ったか…。

