我妻教育

私は悩んでいた。
と同時に若干の煩わしさを感じているのも事実だった。

私は一人でいることが多かった。
今更ながら人と生活する、というのは面倒が多い。


未礼の寝室に目をやった。

ふすまは閉じられている。

私が閉めたのだ。

何度忠告しても、未礼は自分で閉めようとはしない。
言ったらその場は閉めるのだが、継続はされない。

朝、低血圧の未礼を辛抱強く起こすことは、もはや朝の恒例となっているが、やむを得ない状況をのぞいて女性の寝室に安易に入ることは失礼にあたいする。

よって、寝室の中については口出しすることは遠慮しているのだが、同居も進み、未礼の私物が増えて、部屋が雑然としてきていた。

二人の共有スペースである居間は私が片付けることが出来るのだが。

散らかっている部屋でも気にならない人間に、片付けの重要性を理解させるのは困難を極める。



どう言えばいいのだろうか。


忠告だけしていては、教育とは言えない。

だが、諌めてばかりでは、息が詰まるだろう。

嫁に来る、我が家が、居心地が悪いと本末転倒だからだ。







「珍しいこともあるものですね」

眼鏡の位置を直しながら、担任の教師が苦笑いした。

今朝から雨が降っており、湿気を含んだ不穏な空気がやけに重く感じる。


「っしゃーーーー!!!!!!
ツイに同点だァァぁぁぁァ!!!!!!!」


喚起の雄たけびをあげながら、ジャンが、ガッツポーズをして何度も飛び上がっている。

全身で喜びをあらわすジャンの姿が目の端にうつったが、私は自分の解答用紙から目が離せないでいた。

「ケアレスミスですね。計算はあっています。
答えの欄に書くときに書き間違ったようね。
コラ、梅乃木くんも、テスト用紙を受け取ったなら席に着きなさい」

「だって、ティーチャー!!コレが喜ばずにいられると思うかい?!」


私の名前の横に、98点と書かれた算数の解答用紙を私は信じられない面持ちでながめていた。