我妻教育

「…ああ。結局決まらずじまいだがな」

「そんな顔してるな。疲れてるぞ顔。てめぇの女の機嫌とんのも大変なこった」


優留もツリーを見上げ、

「ああ、そうだ。鯛ヶ崎の長男と会ったよ」
報告するように言った。

私は優留を見上げた。


「ババァ…母さんと、やり合ってさ。
どうしても私と鯛ヶ崎の長男を見合いさせたいらしくってさ。一度くらい会ってみてもいいだろう、ってしつこいからさ」

「見合いをしたのか?」


「いや。鯛ヶ崎の長男が通う大学に直接行ってきた。
で、うちの婿養子になるっていうなら見合い受けてもいいって言ったら即断られたよ」


ざまあみろババァめ!と、優留はカラカラ小気味よく笑い、

「見合いはもういいわ。
まずは自分磨きだ。これからだからな」

ぐ…っと背伸びをした。


先を見ている優留の瞳は、イルミネーションよりも眩しかった。


…そうだな。
私もこのままでは……






帰宅すると、居間で未礼が編み物をしていた。

編むスピードがじょじょに上がっているようだ。


未礼は、「だいぶ慣れてきたんだよ。うん、色ぴったり」と、私の首にあてがい、うれしそうにうなずいた。

予想はしていたが、どうやらこのマフラーは私へのクリスマスプレゼントで間違いない。


「クリスマス楽しみだね。
啓志郎くん、部屋いっぱい飾ってね。
折り紙で、わっかのチェーンとか、ティッシュでお花作って。
あたし、たくさんごちそう作っちゃうから♪ね♪」

ウキウキとした声だ。


「ああ。承知している」

24日の夜、ここで2人でクリスマスパーティーをする予定になっている。


「間に合うかなぁ…」と首をかしげ、またすぐ未礼は、手元に没頭した。


真剣な横顔。
肩にかかる毛先。
「伸びたな」と思った。




何も変化がないようで、変わらないことはない。
時は、容赦なく私に変化を求める。



私は縁側に出て庭を眺めた。



決心は固まりつつあった。


いや、答えはいつも私の中では、はっきり決まっていたのだ。


どうしたって、心に嘘はつけないのだから。