「幼稚舎のとき、運動会に両親の代わりに、兄が父兄として参加してくれたのだ。
みんなが兄に注目して、私は誇らしかった…」



兄は太陽のようだ。

幼稚舎のときも、海外に行っても、どこに行っても、子どもたちの大きな瞳はまばゆい光を集めてキラキラと輝く。


しばらくずっと忘れていた。

私も同じ瞳で見上げていたあの頃を。

あの頃の、誇らしげな気持ちを。



目をとじた。
潤んでいるのがわかった。


まぶたのはしから、にじみ出しそうなそれを上をむいて目を開け必死でこらえた。



今、兄が目の前に現れてまた、手を広げて笑ってくれたなら、言葉にならないくらい、うれしいだろう。




もう、卑屈になどなるものか。


今後どのような立場に置かれようとも、私は私の誇りを見失わず、精進を続ければ、必ずや最上の道はひらけるはずだ。


そう、強く心に誓った。










次の日。


父からの連絡が入った。