場の空気を明るくしようとしてか、未礼が軽快な声で聞いてきた。

「何がだ?」


「グリーン☆マイムの名前の意味」


私は、しばらく考えてから答えた。

「グリーンは緑、木、などという意味だろうが…」


「マイムマイムって知ってる?」


「フォークダンスの楽曲か。
林間学校のキャンプファイヤーのときに踊らされたことがあるが」

あと、確か幼稚舎のときの運動会でも、踊った記憶がある。


「そう。それ。井戸を掘って、水が出てきて嬉しい!っていう意味なんだって」


未礼は、マイムマイムの楽曲を口ずさみながら、両手を振り上げた。


水。大きな輪を作って踊る。


「そういう意味だったのか…」


「緑と、水があれば平和なんだ…って」



グリーン☆マイムのホームページの写真を思い出した。


ホームページを最初に開いて出てくる写真は、井戸を中心に、途上国の子どもたちが、手をつなぎ、大きな輪を作っている。



「お兄さん、ほんとに啓志郎くんのこと大好きだよね」

「え?」


「グリーン☆マイムの本部でお兄さんと話したときも、啓志郎くんの家で話したときも、ずっとお兄さん、啓志郎くんのこと話してたよ」



兄が山で遭難したとき、私の入れたチョコレートを友と分け合って、命をつないだ。

グリーン☆マイムのロゴのチョコレート。

おそらくそれは、“家族”をあらわし、
チョコレートをかじったあとは、“友情”をあらわしている。


家族と友と、平和を愛した兄。


兄の強い信念と誇りをかみしめた。



「お兄さん言ってた。
いつか啓志郎くんと、マイムマイムを踊りたいって。
いつか、啓志郎くんを現地に連れて行って、自分の掘った井戸の前で、一緒に踊るんだって」


途上国の子どもたちの笑顔の写真が頭をよぎる。


「だから、一緒に信じよう?お兄さんは無事だよ。
一緒に行こう。
ね、一緒にマイムマイムを踊ろう」


未礼の優しい声の裏には、しっかりとした強い意志が感じられた。