我妻教育

「さぁ。そこまでは…。
亀集院家は、デカイからなぁ。直系か、傍系かまでは。
とにかく亀集院家に婚約の打診をしてるって噂が持ち上がってるよ」


「どこでその噂を…?」


「昨日だ。ちょっとした財界の偉いさんのパーティーがあってさ、俺もオヤジと一緒に参加させられてよ。
その場で流れてた噂話だ。
話題にあがってた優留がさっきいきなり現れたからよ、驚いたぜ」


桧周は、イスにもたれてため息をついた。

私は、テーブルの上で組んだ手を組み直し、確信をもって、つぶやいた。

「その噂が本当だと仮定するならば、優留の相手は傍系の子息とは考えがたい…」


「…だろうな」

私も桧周も、視線を空に泳がせた。



優留の婚約相手は、亀集院家の直系の子息。


それがどういう意味を持つのか、わかっていた。


言い方は悪いが率直に言うと、亀集院家の方が、垣津端家よりも格段に格上だ。


桧周も、わかっているからこそ未礼の今後を危惧し、私を呼び出したのだろう。


「未礼のこと、頼むぜ。あいつ、他に行くとこねんだからよ、追いつめないでやってくれよ」



「…ああ、わかっている…」

他意なく、生返事になっていたことに返事をしてから気がついた。




亀集院家との縁談がまとまれば、優留は、後継者争いから抜きん出ることになる。

優留が、宣戦布告をした理由は、これがあったからだ。



もはや、何から考えたらよいかわからなかったからだ。


優留の裏で糸をひいている黒幕は誰だ…。

父は、知っているはずだ。


“誰か”が、私を、父を潰そうとしている。



これから、私はどうなってしまうのか…。



私は、未礼を守れるだろうか…