高等部の学園祭は、毎年10月末の土日に開催される。


日曜日の後夜祭には、学園内の舞踏会場でダンスパーティーが催されるのが恒例であり、目玉になっている。




日曜の昼前。


生徒や一般客で、にぎわう高等部内を琴湖とジャンを一緒に歩く。



「さぁ、どこからまわろうか?!ボクは、体育館にある巨大迷路に行ってみたいんだ!!」

ジャンがパンフレットを指さした。


「何言ってるの。先に未礼さんたちにあいさつに行くのが礼儀じゃなくて?」

言いながら琴湖は、ジャンからパンフレットを奪いとる。


「ああ、そうだったネ!!そっちが先だったネ!」

ジャンが大げさに自分の額を平手で叩いた。


「えーっと確か、未礼さんたちの3年7組は、中庭で模擬店を出しているんでしたわね」

琴湖は、パンフレットを見ながら、私に問いかけた。


「ああ、こっちだ」

私は2人をつれて、祭りでにぎわう校内を歩いた。


学園祭日和とでも言おうか。


空は実に青々と晴れやかだ。

朝夕は肌寒さを感じるこの頃だが、日中は日が出るとまだ暑さが残っている。


中庭の一角に設けられた特設ステージでは、バンドが演奏している。
周囲には、たくさんの模擬店があった。


学園祭最終日の昼前とあってか、人が多い。

皆、お祭り騒ぎといった感じで、実に楽しげな雰囲気だ。



「で、結局のところ、コレはお食事なのかしら?スイーツなのかしら?」


未礼たちの店の近くにたどり着いたところで、琴湖がいぶかしげに言った。


「食べてみたらわかるさ!!レッツゴー!!!」

好奇心に満ちた顔で飛び出したジャンの首根っこを、琴湖が掴んだ。
そして、困ったような不快な目で私を見た。


「私、得体の知れないモノは口にしたくありませんわ」


私は、うなづき、未礼たちの店を見た。

「同感だ。・・・だが、行列も出来ているようだし、名ほど変わった代物ではないはずだが・・・」



未礼たちの模擬店は、なかなかに繁盛しているように見えた。
列に並んでいる者たちは、興味深そうに品物を待っている。



看板に書かれている品書きは、【たこ焼きケーキ】。