早速、乗務シフトに組み込まれた。
コースが6、特別コースが2。
一週間を、毎日違うコースを巡回し
赤い郵便車に乗務するわけだ。


これが、定時仕業。
その他に、随時仕業もあり、これが悩みでもあり
楽しみでもあった。

電話で依頼を受けて行くのだが、中には
どうも雰囲気が危ないな、と思うような家も有ったり。

集荷先に、いつも小包で
照明器具の新品を、電気店でもないのに
送っている若者夫婦が居た。

目つきが鋭く、人目を避けるように
裏通りのアパートに、昼間ひっそりと
集荷依頼をする。

何をしている人だろう?と思っていたが
僕はさほど気にもしなかった。

ある日、郵便局に警官が数人来訪し
僕らに事情聴取をしたい、と来た。
その、若者の出荷伝票を詳しく調べていたが
なにせ、公社時代の郵便局、事務はみな手書きで
時間に追われて走り書きするから、字なんて
読めたものではない(笑)。
特に僕の字は芸術的、前衛書道、抽象画(笑)などと言われていたので、警官も苦労して解読していた。

その日は何事もなかったが、翌日、出勤簿にはんこを
押していると(公社時代は、公務員なのでタイムカードはなく、役所のようなはんこだった。)
上野さん、と言う酒好きのおっちゃんが
だみ声で叫んだ。

「あいつ、ドロボーだったんだよ。」

手にしていた新聞を読むと、〔建築現場で盗んだ資材をオークションで転売〕とあった。


「もうかるのかねぇ」と僕が言うと、上野さんは
「さあなぁ、〒で働くよりは儲かるんじゃねぇの」

と、言って豪快に笑った。
そう、郵便局の給料はひどく安いのだった。
当時は。今は知らないが....