「―なぜ泣いているの?」

唐突な声に、刹那びくりとする。

聞き慣れてしまった声。

音も立てずに鍵を開けて入ってきた人物は、軽い足音を立てて近づいて来た。

「―なぜ泣いているの?」

綺麗な中性的な声。
引き付けられるような美しい声だ。

彼は黒い服に身を包んでいた。
18、9歳くらいだろうか。
漆黒の髪によく映える赫い瞳をしている。

「……ウェルノ………」

「泣くほど寂しかったのかな」

そうして面白そうに笑った。