「ちょっと、羽月(はづき)どうしたの」

さゆがびっくりして声を掛けてくれる。

気づくと心配そうなその瞳が、目の前にあった。


「なんでもない」


わたしはそう答えたけれど、涙が止まることはなかった。

悲しいんじゃない、苦しいんじゃない。

嬉しくて、幸せで・・・

それで、すごく切ない。


心を締め付ける想いが、きっと涙となって溢れてくるんだね。


ねえ、薫。

この涙のすべてが、あなたへの愛なんだよ。



だけど、わたしの気持ちはあなたに少しも届いていない。


だってわたしたちはまだ・・・出会っていないから。