辺りを必死に見回し始めたんだ。

そう、わたしはある人を探し始めた・・・


周りに、探している人と同じ制服を着た人は何人も居る。

同じ校章をつけた、男子だって。


でも、見当たらなかった。

わたしの探している人は、どこにも・・・。

「おはよ」

そのとき、誰かが後ろからわたしの肩を叩いた。

わたしはハッとして振り向く。


よく考えれば、この時点でわたしたちは出会ってもいなかったし、だから肩を叩いてくることなんてこともありえなかったんだ。

だけどありえるかありえないかなんて、このときのわたしにはまだ見分ける力もなかったから。

わたしが探して居る、その人じゃないかって思ったんだ・・・


でも、そこに居たのはやはり別の人だった。


「さゆ・・・」

そこに居たのは、高校時代のわたしの親友で『さゆ』こと庄野紗弓(しょうのさゆみ)だった。


さゆはびっくりして目を丸くしているわたしをおもしろがるように、ニンマリと笑っている。


だけど、わたしが驚いたのは、突然肩を叩かれたからっていうのだけではなかった。



だってさゆ、制服着てる・・・


それに、髪も短いし、なにより顔がすごくあどけない。


でも、それも半分は当たり前のことなんだ。

だってわたしは、二人のさゆを知っている。

そしてわたしの知っているもう一人のさゆは、10年後のさゆなんだから・・・



「もう、びっくりしすぎでしょ。寝ぼけてるの」


驚いたまま固まってしまっていたわたしに、さゆは急に呆れたような顔になって言った。

さっきはわたしが驚いたのを見て、喜んでたのにね。


そういうところは、なんか変わらない。

ちょっとわがままで、普段は冗談ばっかり言ってる。

でも、本当は誰よりも友達想いで、優しい・・・

さゆは、そんな人だ。