「会いたい、それだけ。」


まるで確認するように問われた台詞に、そう、もう何度紡いだかもわからないような台詞を返した。


会いたくて、会いたくて、会いたくて。


頭の中にはもうそれしかなくて、それでもただ少し、勇気がないだけなんだ。



「強いとか弱いとか、もうそんなのどっちでも良いんだ。」


そもそも、自分の中に悪魔なんてもの、存在してはいなかったんだ。


自らが作り上げた幻に怯え、ただそれに負けてしまっただけのことなのだから。


手に入れたものを今度こそ守ろうと、必死になって自分を見失っていただけで、そんなことのために、俺は夏希を傷つけたんだ。



「じゃあいい加減、臆病風に吹かれるのなんてやめたら?」


「…でも…」


「でも、何?
お前の気持ちなんて結局はその程度で、頭でばっか考えて、そんなんだから智也に負けるんだよ。」


「―――ッ!」


まったく、現実は酷でしかない。


智也のことだって考えなかったと言えば嘘になるし、最近めっきりここに現れなくなったアイツは今、一体どうしているのだろうとは思うけど。



「たまには思ったままに行動してみたら?」


「…ヨシくんにそんなこと言われるなんてね。」


「またそうやってはぐらかす。」


ただ、彼は諦めたように宙を仰ぐことしかしなかった。


確かに今は未来を想像して夢を馳せたり出来るけど、でも、実際会ったらすでに俺なんかお祓い箱になってた、なんて笑えないじゃん。


そんなことを思うからこそ、今ひとつ、踏み出す勇気が持てないんだ。