再び高速に乗り、地元方面へと車を走らせてみた時には、すでに世界はオレンジの色に染められていた。


先ほどの向日葵畑の残像が脳裏にこびり付いたように残ったままで、きっとこのままヨシくんちに帰れば、俺はまた、酒浸りになるのが目に見える。


そんなこんなで結局は、地元より3つ手前のインターで降り、思い出すようにしてナビをセットし直したのだ。


見も知らぬ街に、少しばかり手の平に緊張が滲み、汗ばむのを感じてしまう。


それでもこんな日じゃなきゃ、きっと俺は来ることなんてなかっただろう。







大通りを少し中に入ったところに、その店は佇んでいた。


すっかり陽は沈みきったとは言え、未だ真っ暗とは言えないのは、夏だからだろうか。


裏通りにも拘らず、学生や主婦の姿が多くて、やはり俺は場違いだな、なんて思いながら、思わず口元を緩めてしまう。


ひとつため息を落とし、車を降りて、開け放たれたままの扉の中へと、ゆっくりと足を進めた。



「いらっしゃ…」


そう、振り返った彼女は最後の一言を言うより先に、目を丸くしたままに驚きの色を浮かべていた。


広めの店内はガラスのショーケースに囲まれていて、色鮮やかな花々と共に、その香りが鼻をつく。



「花束、包んでよ。」


花屋に来たらしく、俺は店長である彼女へとそんな注文をつけてみた。


だけども未だ状況を理解していないと言った瞳は、戸惑うように僅かに揺れ動くだけ。



「…龍、司…?」


「元気そうだね、サチ。」


そう、俺が口元を緩めてしまうのは仕方がないだろう。


彼女、サチは左手にかすみ草、右手にはさみを持ったままで、おまけに初めて見たようなポニーテール姿なのだから。