「生きてんだろ?
んで、ヨシくんは居場所も知ってるけど、俺とは会わせないようにしてる、ってとこかな。」


「…何、言って…」


「何だ、ビンゴか。」


そう、焦るように戸惑うのは、親父が生きてる証拠だ。


死んでるならこんな反応はしないだろうし、もしも俺と親父が会ったとしたら、どうなるかわかんないからこそ、彼はきっとこんな風に言うんだ。



「なぁ、龍司。」


「知ってんなら、教えろよ。」


「―――ッ!」


何か言いたげな彼の瞳をわざとらしく作った笑顔で遮ってみれば、ヨシくんは少しの間を置き、諦めるように長く吐息を吐き出した。


吐き出して、そして俺の向かいへと腰を降ろすと、同じように煙草を咥える。



「聞いて、どうするの?」


「わかんない。
けど、会うも会わないも俺の自由なんじゃない?」


「…そう、だけど…」


「心配しなくても、今更親父の息の根止めようとするほど馬鹿じゃないよ。
それに、俺の中ではヨシくんが育ての親なのも変わりはない。」


「…そうだね。」


「だから、教えて?」


そう問うた時、彼は視線を外すようにして足元へとそれを落とした。


すぐに沈黙の帳が下り、少しばかり重苦しい空気の中で、二人分の煙草の煙は揺れるように立ち昇る。



「S町の総合病院だ、入院してる。」


「…そう、わかった。」


まるで決意したように彼によって紡がれた親父の居場所を聞いた時、俺は短く言葉を返すだけだった。


今までは薄ぼんやりとしていた親父の存在が、具体的な台詞によってひどく現実味を帯びるように鮮明になったのだから。