向日葵-the black cat-

見つめた先は、まるで真っ黒い色したキャンバスに、ラインストーンをぶん投げたってゆーか、そんな感じ。


小洒落たイタリアンパスタの店内は平日の夜だと言うのに若者の熱気に湧いていて、少しばかり居心地の悪さの中で俺は、煙草を咥えるようにして煙を吐き出した。


吐き出した先に映る景色は、アイツが生まれ育った街。



「来てくれると思ったわ。」


「…一方的に呼び出して?」


「あら、そうだったかしら?」


忘れちゃった、とでも言いたげにクスクスと笑う向かい合う彼女に、俺は困ったように肩をすくめることしか出来なかった。


彼女、香世ちゃんてゆーか香世サン、から電話をもらったのは昼間のことで、たまには一緒にご飯でも、なんて言って誘われたのだが。


たまには、ってのは随分仲の良い者同士が使う言葉なんだけどな、なんて思っていれば、さっさと時間と場所を告げた彼女は、俺の答えを聞くより先に電話を切ってしまった。


で、今に至るわけだけど。


母親っていうよりはどこか大人の女って感じの人で、向かい合っていても、どうにも味わったことのない感覚ってゆーか。



「何か飲む?」


「ママの奢りだろ?」


「あら、男の子がお金を払うのがマナーでしょ?」


「じゃあ、白い色したワイン。」


「ダメ。」


「何で?
俺が払うんでしょ?」


「でも、ダメ。
飲酒運転なんてさせないし、知ってる?
お酒飲んで怪我したら、血管から血が止まらないくらいに噴き出して、大変なことになるのよ?
大体、龍司さんねぇ、アナタ…」


「わかったって、もう。」


「よろしい。」


さすがは看護師らしい脅しとトークに、俺は諦めるようにため息を混じらせ。


あの日からもう一ヶ月と半分くらいだろうか、そういや酒を抜いた日なんてなかったな、なんて思いながらも仕方なく、俺はウーロン茶を注文した。